【書き起こし】11/20(土)木更津市立富来田中学校 50周年記念式典 講演「私は私、あなたはあなた」

こんにちは、松本佳奈です。千葉県木更津市の里山で、1歳と3歳の子育てをしながら、作詞作曲したりピアノの弾き語りをしたりしています。

先週11/20に、木更津市立富来田中学校50周年記念式典にて歌とお話をさせていただきました。ギター奥野さんとチェロ白神さんとの三人編成で、50分!お話は、私が不登校だった頃のことを中心に。

貴重な式典の場で、地域の人も集まる中で不登校の話をさせてもらうのはちょっと勇気が要りました。
事前の打ち合わせでも、「私の話は少数の子たち向けになっちゃうと思うんですけど良いですか?」と確認させてもらって。それでも「悩んでいる子たちもたくさんいると思うので、松本さんにお話して頂きたいです」と言ってくれた富来田中の先生方に感謝です。ありがたいなあ。
結局いろんな人がいるから…集団生活が合う人も合わない人も、それぞれが少しでも学生時代を心地よく過ごせる方法が見つけられるといいよね、と思う。

終わった後、サインくださーい!と声をかけてくれた子がたくさんいて嬉しかった😭✨ありがとー!!

本番は映像撮れなかったので、早朝から子どもたちのお世話やら奥野さん白神さんの送迎やらご飯作りやら洗濯掃除やらで働きまくってくれた親友 引田香織ちゃんが撮ってくれたリハーサルの写真を。インスタにリハ映像も載せましたのでこちらからどうぞ↓


音響は安定のきみつネットさん。スライド上映の補助は桂子ちゃん。ありがとう!


はい。ちょっと長くなりますが、お話させていただいた内容をざっくりと書き起こしましたので、載せますね。お時間あるときにでも読んでいただけたら嬉しいです。

※追記 2021.11.24
ただ、私は、"学校に行けるようになること"をあまり重要視していなくて…それよりも、"学校の内外に複数の逃げ場があること"が大切だと思っています、という話です。

私は根本的に集団行動や大人数が苦手で、ひとりで静かに本を読んだり、絵を描いたりするのが好きな子どもでした。そんなタイプの私にとっては、集団行動マストな義務教育9年間+高校生活の12年間はかなり長く、無理をして人付き合いをしないといけない部分が大きかったなと感じています。

中2の秋から別の中学校に転校して、遅刻や欠席をしながらもなんとか卒業…高校にも進学しましたが、基本的に"集団生活の中に入ること"が苦手だったので、学校に行きたくない気持ちは変わらず。大勢の中にいるだけでかなり疲れてしまい、自分の意思とは関係なく寝てしまうことも多く、そのたびに怒られることもしんどかったです。
学校以外の居場所…ひとりになれる場所や時間を意識して多く持つ必要があったんだなあと。

木更津市立富来田中学校

50周年記念式典
松本佳奈 講演

「私は私、あなたはあなた」

富来田中学校の皆さんこんにちは、シンガーソングライター松本佳奈です。まず、シンガーソングライターって何か知ってるかな?シンガーが歌う人で、ソングライターが曲を書く人。自分で歌って自分で作詞作曲している人のこと。みんなが知ってるところで言うと、あいみょんさんとか、星野源さんとかかな。

私は小学生の頃に曲を作り始めて、本格的にライブ活動を始めたのは大学3年の頃、20歳頃です。それから15年ほど演奏活動をしています。富来田小校歌の校歌を作らせてもらったのでもしかしたら名前見たことある!って人いるかな。今年1年生のみんなは、今年の6年生を送る会で会ったね。

私は木更津のこんな感じの、自然に囲まれた家に住んでいます。屋根に猿が来ます。家に猿が来る人ー?(何人か手を挙げる)あ、いるねいるね。

毎年柿を取られる。

私は、中学生の頃は漫画を描くことが好きだった。あとゲームと読書。将来は漫画家になりたかった。でも、中一の夏から不登校になってしまったんです。



「ふつう」って、「多数派」ってことかなと私は思っていて。だから、「ふつう」が正しくて「ふつうじゃない」が間違っているのかというと、そうじゃなくて。ただ、「少数派」ってだけなんだよね。

私は割と、少数派にばかり属して生きてきたし今もそうだから、世の中の「ふつう」に当てはまらないことはたくさんある。例えばテレビをもう10年くらい家に置いてなかったりね。学生だった頃は、「ふつう」に合わせなきゃいけないと思ってた。みんなが見てるテレビ番組を見て、みんなが知ってるお笑い芸人をチェックしなきゃいけないと思ってた。

でも今は、私は私。他人は他人。色んな考え方があるよね、と思えるようになった。今日はそんなお話しをしていきたいと思います。


今日お話しするのはこの4項目です。

1 学校に行けなくなった話

2 なぜいじめは起きるのか?

3 絶対的な正しさを持つ母

4 私は私、あなたはあなた




1 学校に行けなくなった話


まず、学校に行けなくなった話ね。

中学生になってなにが変わったかな?と思い返してみたんだけど、まず部活に入って、先輩後輩関係ができた。テニス部入ったんだけど、先輩に呼び出されて囲まれたりしていた。なんか昭和の独特のルールがあってね。令和にはないと思う(笑)

たとえば、ワンポイント入りの靴下を履いていいのは2年生から、1年生は真っ白じゃなきゃダメとか。私は初日からワンポイント入りを履いていっちゃったから、怒られた。あとは、髪を三つ編みにして登校したら「凝った髪型してんじゃねーよ」って。三つ編みは真面目の象徴かと思ってたんだけど、だめなんだって。


そんなんだから、部活を休むとめちゃくちゃ怒られる。でも朝が弱くて朝練に起きれなかった。そんな日は先輩に見つからないように、朝練が終わる頃に登校するようになった。そしたらだんだんと朝の会に遅刻するようになった。遅刻するから目立っていて、「なんで毎日遅刻するの?遅刻はいけないんだよ」ってクラスの子から注意されるようになったり。


で、クラスも結構荒れていて。登校するとトイレの便器が外れてたり、電気のスイッチが潰されていたり、窓ガラスが割れてたり。先生に向かって彫刻刀投げてる子もいた。

例えば電車に乗って彫刻刀が飛び交っていたらその車両を降りるでしょ?でも教室だとそこにいなきゃいけない。先生も注意しなかった。


休み時間や昼ごはんの時間も苦手だった。人と話さなきゃいけないから。でも話すのが嫌だったからほとんど寝ていた。そのうち、授業中もひどい眠気で起きれなくなった。朝になるとお腹が痛くて、だんだん学校に行けなくなった。その頃のことを書いた曲があるので、歌います。


〜価値〜


2 いじめはなぜ起きるのか?


なんでいじめって起きるのか考えたことある?手を上げなくていいからちょっと質問するね。いじめ、したことがある。されたことがある。見たことがある人。

私も中学校の頃いじめ、されてました。でも、小学生の時、いじめに加わったこともあります。それはほんとに軽い気持ちで、みんながその子を無視してるから、なんとなくそこに加わった。そしたらしばらくして、私も無視されるようになった。小学生の時はそうやって順々に回ってくるようないじめだった。

中学生の頃は、描いていた漫画を「松本がこんなの描いてるよ!キモッ」って取り上げられたり、お弁当のゼリーを取られたり…これはなんかかわいいね(笑)学校来るなよって面と向かって言われたり、かくれんぼに誘われて私だけ取り残されて他の子全員帰ってたり。やっぱり傷ついたよね。それより何より辛かったのは、自分が嫌われてるってわかってるのに、授業でグループを組まなきゃいけない時。あと、体育で二人一組にならなきゃいけない時はすごく気が重かった。


いじめやめよう!とか言う人いるけど、大人もいじめやってるじゃんって思わない?今もあるよね?ワイドショーとかで、寄ってたかって叩く。悪口をSNSに書き込む。問題になってるね。いじめって表現がよくないよね。いじめって誹謗中傷、恐喝、立派な犯罪なんだけど。でもそんなことはみんなよーーーくわかってるでしょ?でもいじめちゃうよね。それはなんでだろうね。



私は、いじめが起きやすい環境ってあるよねと思っていて。その一つが、集団生活。集団生活ってただでさえ難しい。全然合わない人も当然いる。学校は逃げられないので難しい。大勢の人が1つの空間で過ごすにはある程度の距離と相手の考えを大切にする気持ち(尊重)がお互い必要。それって結構高度なコミュニケーションなんだよね。


その集団の中でちょっと変わった人、考え方が違う人を見つけ出す習性を人間は本能的に持っているんだって。それはマンモスとってた頃からの名残で、マンモス取りに行くぞー!って言ってるのに俺は行かなーいみたいな人いると命に関わるじゃんね。その集団が成り立たなくなる。だから、そういうはみ出しものを見つけて、制裁するっていう習性が私たち、あるんだって。でも現代では別に変わっている人がいても、大丈夫なはずなの。その人はその人って感じで、ほっといていいはずなんだけどね。

(『ヒトは「いじめ」をやめられない / 中野信子』 より)

二つ目は、他人との比較。
自分と人を比較してしまう人〜!妬みが生まれやすい状況って、自分と同じような立場の人が自分より優れたものを手に入れたとき、なんだって。その人を妬んで攻撃しても自分の実力が上がったりするわけじゃないんだけど、他人と比較することで攻撃的な気持ちになっちゃうっていうのはあるんだよね。


じゃあどうしたらいいのかっていうと…ざっくり3つに、雑にまとめました。




①集団から外れて、好きなことに没頭する(一人の時間を増やす) 

②寝る。食べる。太陽の光を浴びる。

③誰かをいじめてしまったら、ストレスが溜まっているのかもしれないと考えてみる(「誰か」には、自分も含む)


攻撃的になる時ってストレス溜まってる。それは他人に向くこともあるし、自分に向くこともある。私ってばか!死ね!って。そういう時って、大体心の中がごちゃごちゃしてるんだよね。いじめ対策はストレス対策なのかなって。

今になって思うのは、私をいじめてた子たちはかなり、ストレスを心に抱えていたんじゃないかなということ。それは家庭のことなのか、学校のことなのか、わからないけどね。それぞれストレスがない環境なら、いじめは起きないんじゃないかなって私は思ってる。この辺は、みんなどう思う?あとで感想に書いてほしい。

では、一曲お送りします。

〜ばかみたい〜


3 絶対的な正しさを持つ母


学校に行けなくて、じゃあ家が心地良かったのかというとそうでもなくて。


うちは1歳までに親が離婚していて、母とおばあちゃんと3人暮らしで、父親がいなかった。母は世間の目を気にしていたから、例えば幼稚園で父の日参観があれば「お父さん役」の知り合いを派遣してたの。今は父親参観ってある?多分ないよね。その当時はあってさ。私は母が「お父さん役」として派遣した知らない人の似顔絵を描いて、「お父さんありがとう」って渡しててさ。何やってんだろうって思ったね。あとは家に友達を呼んじゃダメ、家の事情は話しちゃダメって言われてた。


勉強しなさい勉強しなさいって言われてた。絵が好きだったから、夏休みの宿題はポスターとか描いたりしてたけど、一晩寝て起きると母が仕上げちゃってた。それが賞に入る。私は虚しかった。下手くそでもいいから自分の作品を描きたかったんだよね。で、中学校に行けなくなって、母の理想から外れてしまった私は、母からなんて言われたでしょう?


「子育てに失敗した」


母「なんでこの子は「普通」になれないの?」

私「どうせ私は失敗作ですよ!」

平行線だったね。


その結果母が何をしたかというと、ベッドの下に隠してあった私の日記を読む。こっそり読めばいいのに、わざわざ翌日それを食卓の上に置いて、「こんなこと書いちゃダメ」って怒られたり。


中3の時に彼氏ができたんだけど、当時は携帯がなくて家電で電話しててさ。親機と子機ってのがあるんだけど、子機で通話してる時に親機の受話器を取ると、子機の通話が聞けるのよ。で、私が子機で彼氏と話してると、母が親機で盗聴してたのね。それも黙っていればいいのに、「あんなこと話しちゃダメ」と言われたりした。そもそも誰かと付き合うこと自体反対してたしね。

他にも、「反抗しないで!」「怒っちゃダメ!」「人に頼らない、相談しない、甘えない!」だから私は他人に対して怒りを表現するのが今も苦手。頼ったり相談するのも苦手。今、子育てをしながら練習してる。怒りも大切な感情表現だし、助けてと言えることはとっても大事なことなんだけどね。


母は善意100%なの。「あなたのためを想って」という一心なの。母の気持ちもわかるんだけどね。私はどうしてほしかったのかな〜と今考えてみると

「どんな自分でも受け入れてもらえる」という安心感がほしかった。


これかな、と思う。

母が「こうであって欲しい」と思う私と、現実の私の間にギャップがあって。母の期待に応えるには、母が求める娘像を演じるしかなかった。それがしんどかったなあと思う。18歳で家を出てからは年に一度会うか会わないかくらい疎遠になってるけど、良い関係でいたいからこそ、必要な距離ってあると思ってる。

そんな母との関係を歌った曲を…「Strings」


〜Strings〜

4 私は私、あなたはあなた

さあ、そんな私が、学校に行けない間なにをしていたのかというと!

漫画を描いてコミケで販売してた!

コミケって知ってる?長机一つ分のスペース3000円とかお金払って、こういうこういう自分で描いた漫画や便箋を売れるイベントなんだけど。学校ではキモいとか、バカにされた漫画を、コミケで買ってくれる人がいた。それが嬉しかった。あれがあったから乗り越えられたなあと思う。


中2の秋に隣の中学校に転校して、遅刻や欠席しながらちょっと学校に行けるようになったんだけど、転校後に救われたことは、ひとりになれる場所があったこと。しんどい時、図書室で本を読んだり、音楽室でピアノを弾いていた。大勢が辛い時、逃げ場があるって、救われるなあと思う。



私にとって漫画や歌詞を書くってことは、自分の本音を聞いてあげる時間を持つということだったのね。自分自身の本音を聞いてあげる時間はとても大切だと思う。自分しか読まない日記はおすすめです。


反抗期は、大人が選ぶものの中で暮らしてきた段階から、自分で選び生きていく段階への切り替わりかなって私は思ってる。何を選んでいいかわからないこともあると思う。自分を知ることで選べるようになっていくから大丈夫。だから普段から、自分の感覚に正直にね。


自分で選んで失敗したなーって思うことは当然ある。選択には正解がないから。でも、大人の方で失敗したことない人いますか?(シーン…)ですよね!私も、今も失敗します。でもそういうものだと思ってる。人に合わせてしまいがちな人もいるかもしれないけど、一人になった時に、あああれが嫌だったな、本当はあちらが好きだったな、とか、自分の本音を聞いてあげる時間を持って。その時間はきっとあなたを助けてくれると思います。

最後に、フレデリック・S・パールズさんという、ドイツの精神科医の方の言葉を紹介して終わりますね。

わたしはわたしの人生を生き、

あなたはあなたの人生を生きる。
わたしはあなたの期待にこたえるために生きているのではないし、

あなたもわたしの期待にこたえるために生きているのではない。

私は私。あなたはあなた。


パールズさんは、カウンセリングに来た患者さんにこの言葉を復唱してもらうそうです。その時に、例えば、

私は友達の期待にこたえるために生きているのではないし、友達も、私の期待にこたえるために生きているのではない。

とか

私は大人の期待にこたえるために生きているのではないし、大人も、私の期待にこたえるために生きているのではない。

とか。


その人が捉われているものに言い換えてもらうそうです。

「自分を犠牲にして親の意向に従いなさい」と言われて育った私は、自分がなくなりそうになる時、この言葉を思い出すようにしています。


さいごに

ちょっとだけ、私が音楽活動と並行してやっている活動を紹介しますね。

これは8月の山の日はエザワフルーツランドさんで、客席をキャンバスにして自由に絵の具で遊べるようにしたライブ。私は、ただただ絵を描くのが好きで。評価とか上手さにとらわれずにただ「描くことを楽しむ」場所を作りたいなと思ってるの。自分がそういう場所に、救われたから。

これは11/3に潮浜公園で開催した木更津オーガニックシティフェスティバル。


綺麗でしょ〜!こういうの興味ある人、やってみたい人、スタッフとしてお手伝いしてくれる人、何歳でも募集してます。イベントの保険にも入ってます。声かけてね。メールとかSNSでもメッセージくださいね。



4年前、東京から船で行ける伊豆大島に行った時、初めてスキューバダイビングをしたの。32歳の時。で、60歳のインストラクターさんが教えてくれた。その人はエジプトの海に潜るのが好きなんだって。エジプトって砂漠のイメージだけど、海あるんだなって。私もエジプトの海に潜りたいと思った。


で、海の中はいろんな魚がいて、大きい魚、小さい魚、カニやえび、ウツボなどが、それぞれ棲み分けている。広々した海を泳ぐ魚もいれば、岩場に隠れている子もいる。お腹が空けば食べ合うこともあるんだろうけど、基本的には、争わないの。すごく平和だった。その時、これが理想の社会だな〜と思ったの。だから私は今後の人生、いろんな海に潜りたい。多様な人との関わりを、魚から教わりたい。


つまづいたり、遠回りしたり、思い通りにいかなくても、思いがけない出会いや涙が出るほど嬉しい瞬間が30歳を超えても40歳を超えても、もっともっと先、90歳100歳、死ぬまであるんだと思う。

今、しんどいなーって人も、全ては必ず終わっていくから。10年変わらないものはないから。変わっていくことを希望にして。私もそうやって生きてます。迷ったら、心が喜ぶ方へ。最後まで聞いてくれてありがとう!


ギターは奥野裕介、チェロは白神あき絵、そして松本佳奈がお送りしました〜!ありがとうございました

〜昼下がり、旅に出る〜


おしまい

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まつかな日誌 〜シンガーソングライター松本佳奈 日々の徒然〜