地元の中学校でお話させていただきました。

こんにちは、松本佳奈です。千葉県木更津市の里山で1歳と3歳の子育てをしながら歌を歌ったりピアノを弾いたりしています。

先日、木更津市立岩根中学校で開催された「地域の先輩に学ぶ会」でお話させていただきました。
これは卒業生が自分の職業について話すという地域主体の取り組みで、生徒さんたちは10種類の職業の中から2つ選んで直接質問したり体験することができます。

私は音楽に携わる職として毎年呼んで頂いていますが、私の辿ってきた道はあまり参考にならないので(笑)音楽関係の仕事はこんなにたくさん種類があるんだよーとか、進学するならこんな道があるよーみたいな話を中心にしています。

親友 引田香織がまたまた荷運びやセッティングなど手伝ってくれまして…ほんと助けられてます。ありがとう。写真も撮ってくれたー!

表舞台で活動することは"就職"とは全く別物だから…。オーディションを受けたり、スカウトされて音楽事務所に所属することはあっても、「毎日何時から何時に出社して、月給は幾らで、休日は何曜日」みたいな所は聞いたことが無いです。(あるのか?笑)

芸術に関する技術をどこから「職業(プロ)」とするのかは人によって線引きが違うと思います。
メジャーのレコード会社からCDを出したからプロなのか?インディーズだけど何十年も続けているからプロなのか?技術的に上手いから?テレビに出たから?ファンが付いてるから?音楽だけで飯を食えてるから?
最近はセルフプロデュースでYouTube等から爆発的にヒットする人たちも出てきて、さらにプロとアマの線引きの意味が無くなってきた気がしますね。



私は実家がピアノ教室なので母からクラシックの基礎を習いましたが、譜面を読むのが苦手で、自分で書いた歌詞にメロディをつけて気ままに弾き語りするのが好きでした。

漫画家になろうと思って小中時代を過ごし、高校でクラリネットに出会って音大を目指し(どうしても楽典に興味を持てず挫折)最終的に大学で小説やエッセイを書いていました。

「音楽も絵も文章も仕事にならないから、もっと真面目に将来を考えなさい」と先生に呼び出されるたびに、自分の得意分野が社会において何の役にも立たないことは自分が一番よくわかっていました。

ただ得意分野を生かして生活したいだけなのにそれが難しい。18歳で音楽事務所の詐欺に遭って500万以上取られたこともあるし、「そんな遊びみたいなことで生計を立てるなんて絶対に認めない!させないぞー!」「お前なんか全然才能ないんだから辞めろ!」と全力で叩き潰してくる人にも出会いました。
↑大学時代。詐欺に遭ってすぐの頃。

「職業」として認められないものを「職業」としていくのは想像以上に道なき道で、わかりやすくどこかに所属してしまったほうがずっと安定するし気持ちも楽だと思います。そういう意味では、自営業で芸術関係をやっていくのはほんとにおすすめしません(笑)

けれど音楽を続けていたから出会えた人がいるし、巡り会えた場所が多々あります。お金にならないからといって得意なことを辞めなくていいし、ひとつの物事を続けていくのは目先のお金を得る以上の価値があると私は思っています。



たくさんの人や場所と出会う中で、優しくしてもらったり助けてもらったり、ああ私も誰かが困っていたら力になろうと思う経験が積み重なって。でも自分に余裕がないと他人を助けることは難しいので、まずは自分を理解し、整えるところからだなと立ち返ったり。

どんな物事も10年続ければなんとなく形になる。じゃあこの先の10年は何をしようかな?そんな風に楽しみながら毎日を生きて、ああいい人生だったなーと死にたい。それが理想です。


話逸れましたが(笑)
45分という短い時間の中で、中学生という思春期真っ只中の人たちにどこまで何が伝えられたかはわからないし、何も伝わっていなくてもいいなと思う。むしろ彼らから学ばなきゃいけなかったのは私の方で、もっと話を聞きたかった。焚き火囲みながら座談会みたいな機会を持ちたいな。火はいいぞー!

誰もが、心の中で大切にしていることをむやみに否定されたり、「お前は価値がない」なんて劣等感を植え付けられることなく、ささやかな日常を味わい、安心して豊かに生きることができますように。私の願いです。

中学校で配布したレジュメの内容を下記に載せておきます。ご興味ある方はどうぞ。

ではでは!

松本佳奈

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2022.1.19(水)「地域の先輩に学ぶ」 
シンガーソングライター 松本佳奈

1、シンガーソングライターとは?
自分で歌詞と曲を作り、歌う人
例 あいみょん、星野源、藤井風、米津玄師、椎名林檎など

2、音楽関係の仕事の種類「音楽に携わる仕事って、意外とたくさんある」
◎表舞台系
シンガーソングライター、ボーカリスト、バンドマン、スタジオミュージシャン

◎裏方系
作詞家・作曲家、アレンジャー、レコーディングエンジニア

◎音楽ビジネス系
プロデューサー・ディレクター、マネージャー、音楽ライター

◎コンサート・イベント系 
ライブハウススタッフ、舞台美術、音響照明エンジニア、結婚式会場での音響照明スタッフ、イベント制作スタッフ、コンサートプロモーター(広告宣伝)

◎クラフト・リペア系
楽器リペアマン(修理)、楽器店スタッフ

◎教育系
音楽講師、音楽療法士など

表に見えているのはほんの一部。たくさんの裏方が支え合って初めて表舞台が出来ています。

3、会社員とフリーランスの違い
どこかに所属するか、自分でゼロからやるか

4、会社員の場合、どんな就職先があるの?
レコード会社、音楽事務所、ライブハウス、レコーディングスタジオ、CDショップ、楽器店など 
→実際に足を運んでみる、アルバイトとして入社してみる

5、進学の場合は?
音楽大学(クラッシック系)、音楽専門学校(J-POP、ジャズ、作詞作曲)など

※私は文章を書くのが好きだったので文学部のある大学に進学しました。音楽系の学校に進まなくても音楽に関する職に就くことはできます。音楽系に進学するメリットは、集中してスキルを学べること、卒業後の仕事を学校から紹介してもらえることかな?

6、給料について
会社員は月給(約15万〜)
決して高くないかも…
フリーランスは歩合、時給、一件につき幾らなど様々。

7、仕事の1日の流れやスケジュール 
人によって、日によって様々。フリーランスの場合はゼロから自分で予定を組む。 

例 ライブがない日
6:30 起床
9:00 保育園送り
10:00 打ち合わせなどあれば外出、なければ自宅で作曲やパソコン作業など
18:00 保育園迎え
21:00 就寝

例 昼ライブがある日
6:30 起床
8:00 会場入り
9:00 リハーサル
11:00 本番①
12:00 本番②
15:00 片付け、撤収
17:00 帰宅
21:00 就寝

例 夜ライブがある日
6:30 起床
9:00 保育園送り
16:00 会場入り、リハーサル
19:00 本番
21:00 片付け、撤収
23:00 帰宅

8、仕事に就いた動機、いつ頃から今の仕事に就きたかったか
この職業に就こうと思ったことはありません。自分の得意分野を生かして生活がしたいと思ったら自然とこうなっていました。最初から一つに絞らないほうが、遠回りですが選択肢は広がると私は思っています。

これまで経験したアルバイト
コンビニ、ファーストフード、洋食屋、スーパーの試食販売、美術学校モデル、パスタ屋ホールと厨房、ロボット博の案内、古着屋チラシ配り、銀座の高級クラブ、カラオケバー、居酒屋、正月の巫女さん、リラクゼーション店受付、英会話スクール受付、某無印良品、沖縄料理屋、カフェ、薬膳カレー屋厨房、アプリ制作事務、温泉宿で住み込み中居業、チーズ工房での梱包作業など

9、気をつけていること、心掛けていること
・自分の言葉で話す。
・選択肢を増やす。
・人に相談する、頼る。

10、必要な資質、適性、資格など
・ゼロからものづくりするのが好きな人
・否定されても思うようにいかなくても、そこから何かを得て、次に繋げようとする気持ち
・スマホやパソコンは使いこなせた方が便利だと思います

11、中学生の時点でこの仕事に就くのに必要なこと、やっておくべきこと
・好きなこと、自分に合うと思うものを見つけて、磨く
・誰にも見せない本音の日記をつける
・実際に行動している人に会いに行く
・様々な職業の大人と関わる
・何が自分にとっての幸せなのか考える
・応援したいものにお金を使う

12、余談
私が音楽で生計を立てられるようになったのはこの数年です。20代前半は牛丼すら気軽に食べれないくらいお金がなかった。今も、収入が多い月と少ない月がまちまちで、安定しているとは言えません。収入面だけを考えたら会社員として就職したほうがずっと安心だと思います。波乱万丈の人生を楽しめない方にはフリーランスのシンガーソングライターはオススメしません(笑)
 
じゃあなぜ続けているのかというと、多様な人との出会いや、ゼロからイチを生み出す面白さや、想像したものが形になることが好きだからです。自分が生み出したものに共感して応援してくれる人がいると、作ってよかったな〜もう少し続けてみようかな〜って気持ちになって、気付いたら14年続いている。続けてきたから、今日ここに呼んでもらっている。どこかで諦めていたらこの時間はなかった。そう考えると、物事を何年もやり続けるのは面白いなあと思っています。

これは職業とは全く関係ない話ですが、あなたと全く同じ顔、体、声、表情、経験、考え方、心を持つ人は世界のどこにもいません。たとえ別の仕事に就いても、あなただけが持つ貴重な感性を、表現を、大切にしてくださいね。
何か困ったことがあれば相談に乗ります。
今日は話を聞いてくれてありがとう。

松本佳奈

まつかな日誌

まつかな日誌 〜シンガーソングライター松本佳奈 日々の徒然〜